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『エントロピーと地球環境』

2007/06/26 (火) 20:39
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エントロピーと地球環境

イリヤ・プリゴジーヌ(プリゴジン)の対談を見てエントロピーという単語に触れたので、M.T.さんからの宿題*1を読んだ。98年度の大学講義を2001年に出版したもの。内容的には文系向け、一般向けの啓蒙本だが、気体の状態方程式を前提にしてカルノー機関(カルノーサイクル)やクラウジウスのエントロピー定式化、ボルツマンのエントロピー定式化を説明し、その上で原発・放射性物質やアルミ、ステンレスなどの金属素材といった「夢の技術」とエントロピーの関係を解説している。この手のものを読むのは10年くらい前に都筑卓司『マックスウェルの悪魔』*2を読んで以来で、その時の記憶も面白かったこととそんな悪魔はありえないという結論以外はかなり怪しいものになっているが、ともかくこの本は最後まで読み通すことができた。
 なるほど、と思わせられたのはカルノー機関が考える「効率」の最大化という視点と、我々の日常生活で言われる「能率」の最大化を筆者が対比させている箇所(p.101f.)だ。時間の節約、単位時間当たり最大の効果を…という「能率」の考え方はそれだけ多くの熱を放出し、得られる仕事量に対する投入エネルギーの割合を大きくしてしまう。一方カルノーの考えた「効率」最大化は準静的過程という仮定条件のおかげでムダな熱は発生しないが、しかし理論上はいつまで経っても仕事はなされない。発電所でも結局「能率」の考え方からは逃れられないから、蒸気タービンを回す時点で著者によれば2/3のエネルギーが電気にならず放出されているとのこと*3。だからそれをもう一回熱に戻す電気機器(コタツとかホットプレートとか)は結構な割合でエントロピーを増大させていることになる。
 前半部p.34f.で言われている潜熱と人間生活との関係にも目から鱗が落ちた。家庭・工場で排出された熱を水が受け止め、大気圏上層で放出して再び雨や雪として地上に戻ってくることで一定の気温を保つ。ははあ、水循環は水資源だけの問題ではなかったのか。
 最後に、筆者はエントロピー概念を日常的な暮らしに転用すること、例えば部屋が散らかっていく様をエントロピーで説明することを戒めている。統計力学的な拡散概念から考えれば、拡散は外部からの特別な力なしで自然と起こることが肝心なのだと。筆者も「拡散」の概念をわかりやすくするために「授業中教室に詰まっている生徒」と「休み時間になって校庭に散らばっている生徒」を引き合いに出すのではあるが、「もちろん、子どもたちは自分たちの意思で出ていくのですから、拡散とは言えません」(p.117)。だがまたそれを「意思」を別にして外部から考えることはまったく閉ざされた道なのだろうか。たとえば車が赤信号で止まり青信号で走り出すのも運転者の「意思」が介在していることは疑いないが、ではそうした命令、秩序に従うことはロボットにできないかというと至極簡単にできそうだ。この「意思」と外から見た秩序形成・秩序維持とを統計力学と別の視点から考えることはできないだろうか。

*1:「宿題」に関してはこちら

*2asin:4062573849

*3:現在ではもう少し効率が上がっているようだ。

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2 Responses to “『エントロピーと地球環境』”

    4Avatars v0.3.1 v0.3.1
  1. まー
    6 月 26th, 2007 23:20

    あらーありがとうございます(*´▽`)高校生が読むにはいいかなーと思って、読ませております。「使わないモノは最初から作らない」の姿勢が基本なんだよね。最近はダークエネルギー関連を読んでますよー。

  2. 4Avatars v0.3.1 v0.3.1
  3. gamma_ut
    6 月 27th, 2007 11:53

    コメントどもです。私、なにか変なこと言ってません?(笑)ダークエネルギーは初耳。宇宙についてはダークマターで止まってました…。(笑)

    最近一部の環境運動自体が槍玉に上がってたりしますけど、まあrecycleよりはそもそもreduceだったわけで、当然の帰結でしょうか。

    高校生…うーん、文系には良いですけど理系はちと食い足りないのでは。そうでもないかな…。(笑) ちと古い見解もあるようですし。アルミがアルツハイマーの原因説は一応否定されたんでしたっけ?あと太陽光発電も現状大規模ではなかなか難しいみたいですね( http://bewaad.com/2007/06/26/181/ )。大きなビル・工場の屋上に必須、とか法律でやれば変わるのかもしれませんが。

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