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『日本語の歴史』

2007/04/28 (土) 03:42
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日本語の歴史 (岩波新書)「できる限り、日本語の変化を生み出す原因にまで思いを及ぼし、『なるほど』と思ってもらえること」(p.7)を目指した、門外漢にもきわめて分かりやすい好著。内容については変に語るより目次が非常によくまとまっているので、そのままこのエントリの末尾に引き写しておく。目次、小見出しがいい本というのはそれだけで評価が高まる。きっと岩波新書の担当編集者と著者の山口仲美氏の念入りな作業があったのだろう。ついでに言えば巻末にも各章ごとの参考文献一覧があり、日本語を考える最初の一歩としてしばらくはひっぱりだこになりそうな予感。

 このわかりやすさの陰には「あとがき」で語られているように筆者の次のような「断念」がある。

 全体の枚数は限られています。述べたい現象は山ほどあります。一口に日本語と言っても、発音の側面、文字の側面、文法の側面、語彙の側面、文章の側面などがあつて、それぞれが変化の軌跡を描いているのです。でも、それらをすべて述べることは出来ません。また、述べたとしても、メリハリの乏しいものになってしまいます。

 そこで、各時代の特色を出せるような山を作りました。奈良時代は文字を中心に、平安時代は文章を中心に、鎌倉・室町時代は文法を中心に、江戸時代は音韻と語彙を中心に、明治以降は、話し言葉と書き言葉という問題を中心に、という具合です。そして、できる限り現象の起こった原因にまで思いを及ぼして書いてみました。
 山口仲美『日本語の歴史』(岩波書店) p.222

『日本語の歴史』と銘打って(しかも新書の分量で)出すことを考えた場合、各時代ごとに切り出す側面としてはかなり良い選択なのではないだろうか?そして実際「現象の起こった原因」にも丁寧に答えようとしている(と私には思われる)*1

 本書では例えば「普通文」に関しても具体的な人名を出すなどより詳細に議論が展開されているし、「古事記 真福寺本」「五箇条の御誓文」などの図版も多数含む。下に書いた目次を見れば分かるようにここにメモしなかったトピックも多い(「ます」のルーツ、奈良時代の発音など)。そして最後の部分では現代の日本語が抱える問題にも著者なりの見解を示している。興味を持たれた方はこのハンディな本に一度目を通していただきたい。以下は目次の転載。

日本語がなくなったら
あなたの問題/織物をつむぐ糸/日本語がなくなったら/何をめざして/話し言葉と書き言葉のせめぎあい

I  漢字にめぐりあう―奈良時代
話し言葉の時代/「清麻呂」は「穢麻呂」に/本名を知られてはならない/困った問題/日本人は「借りる」ことを選んだ/「借りた」ために起こった苦労/漢字に日本語の読みを与える/万葉仮名の誕生/一字一音が基本/訓読みの万葉仮名/戯書の万葉仮名/動物揃え/日本にも文字があった?/日本固有の文字はなかった/現在の発音は/奈良時代の発音は/「恋」と「声」の「こ」の音は別もの!/現在には無い発音/どんな言葉が使われていたのか

II  文章をこころみる―平安時代
日本最古の文章は/天皇は自分に敬語を/漢式和文という名前で/日本語の文章を書き始めたのは、いつ?/男性たちは漢式和文で日記をうけた/最もステイタスの高い文章とは/奇妙な翻訳/漢文を和語で訓読する/ヲコト点という面白い発明/カタカナの発生/漢字カタカナ交じり文の誕生/『今昔物語集』は読める/事件を活写する/助詞・助動詞を小さく書く/万葉仮名文から草仮名文ヘ/ひらがなの思想/女は、ひらがなを使う/男も、ひらがなを使う/ひらがな文には漢字も入る/ひらがな文は話し言葉で書ける/『源氏物語』は和歌的散文/ひらがな文は、なぜ代表にならなかったのか

III  うつりゆく古代語―鎌倉・室町時代
「係り結び」に注目/強調するといわれても/念を押して強調する/指し示して強調する/取り立てて強調する/疑問や反語を表したい時/現代に痕跡はあるか/明けてぞけさは別れ行く/「なむ-連体形」は衰える/なぜ衰退したのか/「なむ-連体形」の消滅/慣用的な表現「とぞ申しける」/「こそ候へ」と固定化してくる/「こそ-已然形」が生き残る/疑問と反語は、どうなったか/終止形が連体形と同じ形に/文の構造を明示する/論理関係を明示する/武士たちの言葉

IV  近代語のいぶき―江戸時代
話し言葉は会話文に/地の文は書き言葉で/「じ」「ぢ」と「ず」「づ」の発音が現在と同じに/清音は、どうなっていたか/母には二度会ったけれど/謎が解けた/「大工調べ」に江戸語の面影/「アイ」が「エー」に/「エー」になる、その他のパターン/町人階級の一言葉/上方では町人階級でも使わない/上方語と江戸語の対立/なぜ「かんのん」なのか/「アナタ」「オマエ」も江戸時代から/「オメー」「キサマ」も尊敬語/「ワタシ」「ワシ」も江戸時代から/「オレ」は女性も使った/武士は自分を何と呼ぶか/敬語表現も現在の源流/丁寧表現も現在に連なる/「である」「だ」も現れた/女性は「お」と「もじ」を愛用する/ありんす言葉

V  言文一致をもとめる―明治時代以後
話し言葉を統一せねば/東京語を標準語に/漢字御廃止の議/幕末の文章は、すべて文語文/なぜ話し言葉と書き言葉は離れるのか/公用文を漢字カナ交じり文で書く/漢文直訳調が勢いづく/福沢諭吉の思想/「ござる」体の登場と言文一致の挫折/なぜ言文一致は難しいのか/西洋文明の吸収は、どう行なわれたか/翻訳も漢文直訳調で/「かなのくわい」と「羅馬字会」が設立された/円朝の語り口が言文一致体の手本に/二葉亭四迷の試み/翻訳も言文一致体で/山田美妙と嵯峨の屋おむろの言文一致体/言文一致体は再び暗礁に/普通文の台頭/尾崎紅葉の「である」体/「である」体は、なぜ受けたか/言文一致会の設立/最後になった公用文/個性の出せる言文一致体

日本語をいつくしむ
過去からの贈り物/豊かさと煩雑さの狭間で/どう折り合いをつけるのか/語彙が多すぎる?/カタカナ語をどうするか/日本語の論理性を生かすには
 山口仲美『日本語の歴史』(岩波書店) p.i-iv

*1:内容のまとめは2007年5月18日にはてなグループのほうに一旦移動。[5/18]

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