「夢見たものは‥‥」

昨日の『わたしが・棄てた・女』のエントリを書きながら思っていたのはこの詩だった。合唱曲としての方が有名だろうか。

夢見たものは ひとつの幸福
ねがつたものは ひとつの愛
山なみのあちらにも しづかな村がある
明るい日曜日の 青い空がある

日傘をさした 田舎の娘らが
着かざつて 唄をうたつてゐる
大きなまるい輪をかいて
田舎の娘らが 踊りををどつてゐる

告げて うたつてゐるのは
青い翼の一羽の 小鳥
低い枝で うたつてゐる

夢見たものは ひとつの愛
ねがつたものは ひとつの幸福
それらはすべてここに ある と
 「夢見たものは‥‥」 立原道造『優しき歌 II』(1947年*1 )

木下牧子氏による合唱曲のMIDIは「夢みたものは」( 合唱でYEAH! さん)にあるが、これは一回合唱でも聴いてみたい*2。少し調べると木下氏の知り合いの結婚式が初演だったそうだ。森田ミツにはありえなかった幸せがそこにはあったわけだ。

 ところで「山なみのあちら」と言えば「山のあなたの空遠く 『幸』住むと人のいふ」の『海潮音』を思い出さないわけには行かず、ついでに「青い鳥」のイメージも重なって立原の描いた牧歌的光景がなおいっそう膨らんでくる。だが「山のあなた」では幸せは遠くに留まっていた。「青い鳥」もメーテルリンクの戯曲では最後に逃げていってしまう*3。…となると、立原が死を予感しながら夢見たものはどのへんにあったのだろうか。そしてそれは今でもなおあるのだろうか…。

*1:ただしこれは彼の遺稿集。この詩の構想は彼が24歳で世を去る2年前の1937年初めから38年8月ごろまでとされる。

*2:と、書くと、いかに私が合唱というものに無縁だったかということがわかる。

*3:「青い鳥」は松岡正剛氏の「千夜千冊」で取り上げられている。こちら

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