webの情報 -雑書き

 その要点は時間性の跳躍にある。むろんその役割は本質的には図書館が果たしてきたものだが、違う点もある。つまり、一つは記述に際して印刷物ほど肩肘を張らなくていいということ。これは同時に情報の粗悪性も含意しうる*1が、逆に言えば情報の幅広さにもつながる*2。ここからして図書館に赴き、そこで本のページを繰るのとはまた違った情報体験―どちらかといえば面と向かって語りを聞くような―が生まれてくる。もう一つは、その語りを語り・聞くという体験が、語り手と聞き手の間の時間差でなされる―お互い好きな時に語り、好きな時に聞くことができる―ことなのだ。ここに時間性の跳躍がある。

 webは同時にハイパーリンクというものによって情報間のつながりの拡大を容易にした。ただしこれは古い情報も新しい情報も同時に展開させることになる。古い情報を新しい情報と共に認識させること、このこと自体は新しいことでもなんでもないが、その量が増えたことで情報・語りの慌しさは加速させられたことになる。しかし全体としてみれば恩恵のほうが大きいだろう。

 さて語りを聞くと言っても、付き合いでくだらない話を聞かされるオフラインとは違い、検索によって自分にとって有用な語りを取捨選択して聞くことができることになった。一見素晴らしい能率化のように見えるこの事態も、逆に言えば取捨選択が自分の価値観でなされる以上、自分の価値観を変更する機会はそれだけ少なくなり、自分の価値観を強化する機会がそれだけ増えたということかもしれない。

*1:例: この文章。:-)

*2:「何事にまれ、いみじと思ふことの、心に籠めて過ぐしがたきすぢは、今の世の、何の深き心もなき、おほかたの人にても、同じことにて、たとへば、世にめづらしくあやしきことなどを見聞きたるときは、我が身にかからぬことにてだに、心のうちに、『あやしきことかな、めづらしきことかな』と思ひてのみは止みがたくて、かならず、はやく人に語り聞かせまほしく思ふものなり。さるは、語り聞かせたりとて、我にも人にも何の益もなけれども、しかすればおのづから心の晴るるは人の情のおのづからのことにて、歌といふものの詠まるるもこれなり。」本居宣長『源氏物語玉の小櫛』

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